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「よくわからないのですが…私に何かご用でしたか?」
「ゆうさんですか?」
「神戸夕月と申します」
「恭ちゃんが‘ゆう’って呼ぶ人ですか?」
「…はい」
「少しお話がしたいのですが…」
「すみません。今仕事中なんです。終わってからでもよろしいでしょうか?」
「はい。駅前のカフェで待ってます」
ペコペコっと私と玲子さんにお辞儀をしてから立ち去る後ろ姿を見ながら
「お名前もわからない…」
と思わず呟くと
「渚チャンだよ」
玲子さんが言いながらドアを引く。彼女は電気とヒーターをつけながら
「クリスマスイブの日、まだ私と恭平くんが大将のところにいる時にあの子から恭平くんに電話があったのよ。もう私たちが散々話したあとだったから結構遅い時間だったわ。恭平くんの部屋の前で待っていた様子だったわよ」
とブラインドを全部上げる私に言う。
「そうなんだ。それで私に用?玲子さんの間違い?」
「一緒にいた私でなく‘ゆう’に話があるってことは恭平くんが‘ゆう’について何らか喋ってるってことじゃない?恭平くん、渚チャンのこと‘自分の部屋に招いた人の中の一人だ’って言ってたわ」
「何か…この間からあのカフェ縁起が悪い気がする」
何を言われるのかさっぱり予想の出来ないまま、私は黙々と大掃除をした。
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