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「そう、恭ちゃんに言って下さい」
「私がですか?」
「はい。そうすれば、恭ちゃんの報われない想いも絶ちきれると思うんです」
これって‘はい’と言わないと終わらないパターン?
でも私は、付き合う付き合わないを別にして、恭平くんを傷つけたり悩ませたりはしたくない。彼も玲子さんや星本さんや他の職人さんたちと同じように、私が入社した直後からいろいろと教えてくれた大好きな先輩で仲間だもの。
「わかりました。今、吉川さんが彼に電話して下さったら、この場でそう伝えます」
吉川さんの電話で私が話しをする意味や状況を恭平くんは分かってくれるはず。そう信じて吉川さんと視線を合わせると‘今’というのが良かったのか、彼女はすぐ恭平くんに電話を掛けた。ごめんなさい、恭平くん…捨ててと思わないけど…状況をくみ取って…傷つかないで…
「恭ちゃん?少しいい?…ごめん、ちょっと電話かわるから…」
そう言って差し出されたスマホを受け取り
「こんばんは、恭平くん。忙しい時にごめんなさい。運転中や客先ではない?」
まずは彼の都合を聞く。
‘はっ?ゆう?’
「はい。そちらの状況は?電話大丈夫ですか?」
‘もう会社だから大丈夫だけど…何?’
「それは今から言うことを吉川さんが伝えに玲ハウジングまで私を訪ねてきたから」
‘はぁあああ?’
「玲子さん並みの声…だ…あのね、私が恭平くんの部屋の模様替えをして申し訳ありませんでした。全て撤去、破棄して下さい。よろしくお願いいたします」
ピッ…
「終わりました。失礼します」
自分で決めた対応だったけど言っているうちにこみ上げるものがある。スマホをテーブルに置いて足早にカフェを出ると、キーンと冷たい空気がこみ上げるものを一瞬で冷却してくれた。恭平くんどうのこうの以前に、自分がコーディネートしたものを壊す行動はつらくてキツイな。でも彼女の言うことが全くわからないわけではないので、きっとこれで正解だと…誰か教えて…
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