変わる者たち

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「恭平くん?さっきは電話取れなくてごめんなさい」 ‘いや、いい。こっちこそ渚が悪いことした’ 「…うん…?」 いきなり想定外だ… 「吉川さんのしたことを恭平くんが謝るんだ…どうしてかわからない」 もう思ったことを言うしかない。壁からずり落ちたら、作戦会議をしてもらえるから…落ちてもいいや。 ‘突然ゆうのところに行ったんだろ?悪かった’ 「ごめん…まずそこが私にはわからない。会社まで突然来たことを謝るなら吉川さんじゃないの?どうして恭平くんが謝るんだろう…?」 ‘…’ 「あのね、私何もわからないの。吉川さんは会社へ来た時に名乗らなかったし、カフェで私が座る前に‘お名前を’と言って名前だけ聞いたけど、どこの誰だかわからないまま‘ゆうさん’って呼ばれて恭平くんの部屋の模様替えのことを言われて…」 ‘模様替えは俺がゆうに頼んだんだからいいだろ?’ 「それをどうして私に言うの?私も吉川さんにそう言いました。恭平くんが彼女に何をどう聞いたかはわからないけれど」 ‘付き合ってもいないのにどうして部屋の模様替えをしたのか?と渚が聞いたら全て撤去とゆうが言ったんだろ?大丈夫だ…そこはゆうの本心でないと俺は分かっている’ 「ちょっと待って…付き合う気がないのにそんなことしたら家に帰る度に恭ちゃんがあなたを思い出すでしょ?って吉川さんが言った後に、お手数ですが全て撤去して頂いて結構ですって私が言いました。どうして?の質問には‘頼まれたから’と答えたもの」 ‘…それは聞いてない…’ 「うん…いいんじゃないかな?聞いた聞いてないだとか、言った言わないということが問題ではないように思います」 誰とどういう関係性であったって…家族、友人、お客様…どんな相手とも、どんな種類の信頼信用、どれだけの信頼信用を互いに持てるかが大切だと思う。それは大学生の時から、自室というプライベートな空間を私に見せて任せてくれる人たちと出会う中で感じて、玲ハウジングで仕事を始めてから玲子さんや星本さん夫妻、職人さんたちが一番若くて経験のない私にも‘コーディネーター’というプロとして接してくれるうちに私の信念となっている。
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