変わる者たち

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‘ゆう?撤去や破棄がゆうの本心でないことは分かっている。そう言おうと思ったのに、言い逃げのように通話が途切れては俺は何も伝えられない’ 言い逃げ…したつもりではなかったけれど… 「…本心でないことは分かっているのに…言い逃げと捉えるんだね。仕事と違って少しずつ感覚が合わない…私は吉川さんが会社へ来たことを謝るのは吉川さんで、恭平くんは私の名前や会社とかを私の知らないところで知らない人に話していたことを申し訳なく思うはずっていう感覚なの。結構怖いものだよ?だから‘来た’っていう行動を謝るのは吉川さんで、恭平くんではない。恭平くんは原因を作ったってことなんだと私は思う」 どっちが正しいかはわからない。でも私と彼の感覚が合わないというのが明らかになったと思う。先日のカフェで彼の‘当たり前’と‘当然’が私の頭をぐるぐる回っていたのは前兆だったかな。 「恭ちゃんの報われない想いも絶ちきれると思うんです…そうも吉川さんは言ってた…恭平くんが何をどう彼女に話したかは知らないけれど…私は、付き合う付き合わないを別にして、恭平くんを傷つけたり悩ませたりはしたくなかった。恭平くんも玲子さんや星本さんや他の職人さんたちと同じように、私が入社した直後からいろいろと教えてくれた大好きな先輩で仲間だから」 ‘その名前に湊さんがいないのは何故?湊さんは別枠ってこと?’ 「どうして湊さん?私はたくさんの方の名前を個々に全て言ったわけではないよ?もちろん湊さんも含まれるけど?」 ‘そうか…’ 「私、撤去や破棄って言うの苦しくてつらかったけれど…今はもうそれでもいいかなって思う」 ‘はっ?ゆう?’ 「だって、それのせいで仕事がうまくいかないのは嫌だもの。私は…」 もうこの状態で長々と話していてもお互いにメリットはない。 「はっきりと言った通り…恭平くんは先輩で仲間で…告白もされていないのにおかしいけど…プライベートではお付き合いできません。来年からもお仕事はどうぞよろしくお願いいたします」 これで越えられなきゃ、ずり落ちだね…私にとっては壁の向こう側に身を乗り出して半分乗り越えてるんだけれど。
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