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スマホを持つ手に汗をかき、右から左へと持ち直して右手のひらをパンツで拭くと…ぎゅっ…湊さんの左手が私の右手を包み込んだ。ずり落ちた時の安全マットを敷いてくれたんだね…きっと。
‘…ゆうが子どもっぽいと思っていたけど…それが仕事の時と大きなギャップで可愛いと惹かれたけど…ゆうの方が俺よりずっと大人かもしれない’
それはどうかわからない…
‘ゆうに気を使わせて…いろいろ言わせてごめん…もう誘わない。フラれるのが嫌で…告白しないまま曖昧にしていたのは俺だから’
乗り越えられた?一人で乗り越えたかもしれない…
‘これからは今まで通り、仕事はよろしく。玲子さんたちの飲み食いにも変わらず参加するけど…いいか?’
「もちろんです」
‘えーそれってゆうさんと飲みってこと?そんなのいつまでも引きずることになるんじゃないの?’
吉川さん、いたんだ…
「恭平くん、じゃあそちらの話はそちらで…今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」
‘ゆう、渚は高校のバスケ部のマネージャーだったんだ。部屋に呼んだのもそのチームメイト数人とで…’
‘元カノって言わないところにゆうさんへの未練を感じる’
‘ちょっと黙れよ、渚’
‘恭ちゃん…ごめん…怒らないで…’
「えっと…仲いいね…じゃあ、また会社か現場で」
‘ぁぁああ…またな’
プチッ…
「終わった…ミッションコンプリート…作戦会議の必要なし…私、出来る子だった…明日星本さんに成長アピールしよ…」
「お疲れ、夕月。僕は言うこと無し。最高にカッコ良かった…頑張ったな」
私の独り言のような呟きに、そう答えた湊さんは
「時間もぴったりだ。さすが出来る子、夕月」
と笑いながら店の駐車場へ車を入れた。
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