変わる者たち

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「湊さん、これで食べ放題オーダーしていいですか?」 車を降りる前に財布から1000円札を出して湊さんに渡しながら聞くと、彼は受け取りながら答える。 「飲み放題は100円プラス必要だけど?」 「100円で飲み放題は魅力的ですけど、昨日も飲んだので今日は食べ放題で」 「了解」 手に汗をかいていたような体温が車を降りたとたんに冷やされる。でもそれがごちゃごちゃと考えて疲れた頭をクリアにするようで気持ち良い。スーッと冷気を肺一杯へ吸い込むと 「いっぱい食べよ…」 星の見えない空に向かって言った。 「…美味し…どれも美味しいのはやっぱり出汁のおかげ?すっごく美味しい」 「太めのうどんが美味しいほどの出汁ってすごいな。今日病院で教えてもらった」 「病院?」 「春に設計を上げるところの院長に教えてもらったんだ」 「病院ってどこか特別難しいポイントってありますか?」 「病院と一言で言ったけど、実は病院そのものではなく新しく病院に併設されるホスピスを設計している」 「あ…ごめんなさい…聞いても良かったのかな?」 「いいよ。ホスピス入居の説明会とか一般公開されているし」 「ホスピスか…特別な場所ですよね…入居される方とご家族にとって特別な意味をもつ場所…」 「夕月、すごいな。ホスピスと聞いただけでそう思えるのはすごいと思う」 「インテリアコーディネートの勉強をする間に居住空間以外についてもいろいろと勉強しました。その中に病院やホスピスもあったので」 「そうか。僕は未だに…設計中の今も…時々院長に会ったり、ホスピスに入って緩和ケアを希望するという人や家族に会って彼らの期待や希望を繰り返し感じないと理解するのが難しい概念でね…これまでで一番四苦八苦してる」 人生の最期のときを穏やかに過ごすため、さまざまな苦痛を和らげる治療やケアを行う施設…病院でもなく介護施設でもないホスピス。 「難しい概念…そうですよね。最期を悲痛に暮れて迎えるのではなく、楽しい記憶や経験、親しい人たちを思い出しながら穏やかに過ごして欲しい場所です…口で言うのは簡単ですけど…形にするのは難…」 「夕月、今のもう一度言って」
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