進む者たち

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「マカオ…のホテル…どうでしたか?」 「うん…良かったけれど」 湊さんは繋いでいない方の手でグラスを持って残りを一気に飲み干すと 「今ホスピスに向き合っている僕には眩し過ぎる空間だった」 そう言って私を見る。 「目的や用途が真逆の建物ですもんね」 「うん。でも夕月を連れて来たかった、と初めてのマカオで思ってた」 「玲ハウジングのジャンパー着てオペラグラスとメジャー持って行っていい?」 「いい」 「ふふっ…どういう魅力があるんだろう?」 「行く前は、マカオはギラギラしたカジノの街というイメージが強かったけど、カジノホテルが集中しているタイパ島とは逆にマカオ半島にはヨーロッパを思わせるポルトガル統治時代の世界遺産が30ヶ所もあって世界遺産に登録されているんだ。マカオ半島に点在しているカラフルな建物は必見」 カラフルな建物か…魅力的な刺激だと想像できる。 「ホテルは眩し過ぎたけれど、いろんな教会とか…とにかく街をたくさん歩き回って来た。夕月はどうだった?予約が埋まっていたんだろ?」 「びっちり、キャンセルもなく、来年も承りました。夏をお断りしたのも…ふふっ、去年と同じやり取りをしてきたの」 「インプット年度の始まりに乾杯してから今日は帰ろうか?明日から仕事だろ?」 彼はその言葉通り私を部屋まで送り届けてくれた。そして私は湊さんの乗ったタクシーを部屋から見送り…少し…ほんの少し寂しく感じたんだ。
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