8039人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
玲ハウジングの仕事始め。この日は何曜日であろうが毎年恒例の新年会になる。
玲子さん主催の新年会は玲子さん、星本さん夫妻と私だけでなく、よく仕事をお願いする職人さんたちにも声を掛ける。そして忘年会ではしつこく飲むらしい職人さんたちがこの新年会では、綺麗に飲んで2時間でさっと引き上げるのも例年同じことだ。
立花電工の三宅部長と恭平くん、湊さんも参加で総勢20名の新年会は
「これだけ人数がいると‘おめでとう’と言えない方もおられるので言いませんが、皆さん今年も昨年よりお世話になりますっ。よろしくお願いしまーす。乾杯」
「「「「「お願いします」」」」」「「「「「乾杯」」」」」
昨年と一語一句変わらない玲子さんの乾杯の音頭で始まった。今日私の隣は星本さんと左官職人の宮田さんだ。去年も宮田さんとは隣だった。宮田さんはビールを飲まないで日本酒だけの人なので、ビールが苦手な私と二人で日本酒を飲むからだ。
ビールのあと日本酒を飲む人が半数ほどになった頃、玲子さんは永遠にビールを飲みながら、それぞれの席での談笑の中に声を響かせた。
「はーい、新年らしく今年の抱負を語っていただきましょう。でも人数が多すぎるので若者よ、語りなさい。夕月と恭平くんね」
拍手が起こる中
「聞いてないし…」
と呟くと
「そういうもんだ、夕月。一番小さな夕月からいけ」
星本さんが私に言う。
「…パワハラ」
「うまく共存しろ」
「じゃあ、それを今年の抱負にする」
「それは抱負とは言わない。生きる術だ」
「ムムッ…星本さん、最近私に厳しい」
「愛情込めて育ててる」
「否めないのが悔しい」
「諦めて今年の抱負を語れ。我らがボスの命だ」
最初のコメントを投稿しよう!