目撃者たち

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狭い階段を上がる間、湊さんはずっとクックッ…と笑っている。 「玲子さんと夕月は、いつ見ても年の離れた姉妹に見えるな」 「星本さんにも明子さんにもよく言われます」 と、私たちが出たあとのカウンターの隅で玲子さんたちが何を話しているのかは知らない。 「デートって言うから夕月が反応したのよ。そりゃそうでしょ?二股されてたって直後に、自分が二人の男と付き合うようなことする子じゃないわ。大使館パーティーは仕事の頭で行くって抵抗なく決めただけよ」 「でも湊さんはマジだからヤバいでしょ?」 「マジだからヤバいっていうのは分かるけど、湊さんはデートと感じさせないままドレスの準備から当日まで夕月と会える算段をしたわけ」 「…玲子さんは湊さんとゆうが付き合えばいいと思ってんの?」 「それもいいし、恭平くんでもいい。私でもいいかと思うくらい可愛い夕月が、楽しくてハッピーなら相手は誰でもいいわ」 「私でもって…」 「まあ、そこは心配いらないわよ。さっきの恭平くんは失敗、分かる?ぱぁーっと遊びに行こうって…遊園地かカラオケか、何だかは知らないけど‘デート’って言わずに、一人で家にいないで友達が連れ出してくれるって感じさせれば、夕月も普通に行くって言ったはずだわ」 「うっす…」 「頑張れ、若者」 「はい」 「私は湊さんと恭平くんのどっちも応援するけど恨まないで」 「結果次第ですよ」 「ビジュアル的にも、夕月はどっちも似合うからね。わくわくする」 「人で遊ばないで下さい。俺もマジなんで」 「知ってるわよ。2年間よく我慢してたわよ…恭平くんも湊さんもね」 「寒ーい」 「今年一番の冷え込みだな。珈琲にする?飲み直すか?」 私はもう帰っても良かったのだが、玲子さんと湊さんとのやり取りから帰してもらえないと悟り、珈琲と答えた。
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