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終業後、2階から階段を降りきる前に
「ゆうさん」
と聞こえる。出た…うそでしょ?もう出たの?…万が一がすぐなんですけど…湊さん…
何となく距離を取るため、あと2段を残して立ち止まった私に
「何度もすみません…ちょっと聞きたくて…」
吉川さんがペコッと頭を下げる。一人で対応しないと昨日湊さんと約束したばかりだ…2階に行けば玲子さんがいる。
「…寒いので事務所へ…どうぞ」
招き入れる相手ではないだろううけど…玲子さん、ごめんなさい…と思った時
「「夕月」」
上から玲子さん、下から湊さんに呼ばれ、そのタイミングの良さに安心すると同時に可笑しくなって
「…ふふっ…」
笑いながらも熱いものが込み上げる。吉川さんのこと、よくわからないから怖かったんだとその時になって自覚して、視界の湊さんが潤んだので慌てて玲子さんを見上げるように顔を上げる…セーフ…と、玲子さんが表情を変えた。怖い玲子さんだよ、これは…太一の時とも違う本気で怒った玲子さんだ。太一の時は腹立ちはありつつも呆れがあったので楽しんでいた節がある。
「夕月…何もされてないか?」
玲子さんに気を取られた瞬間、湊さんの腕が私のお腹に回った。
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