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「ご用件をどうぞ」
「ゆうさんに聞きたくて…」
「それを言ってと私は言ったの」
玲子さんが苛立っている。たぶん夕月は気づいていないが、玲子さんは気づいている…この女の視線や表情が僕と玲子さんに向けるものと、夕月に向けるものとでは違っている。媚びる相手とマウントを取る相手といったところか…
「恭ちゃんと連絡取っていますか?」
「その質問の意図は?」
「恭ちゃんが未だにあのタペストリーとかを捨てないから、ゆうさんが撤去だとか破棄って私の前でだけ言って、そのあと連絡を取り合っているかと思ったんです」
「なるほど。ちょっと待ってね、渚チャン。湊さん、恭平くんの番号にかけてください」
「はい」
玲子さんの言う通り、僕のスマホで恭平くんを呼び出す。
‘はい、湊さん’
「うーん、ちょっと待って。玲子さん…繋がってます」
「はいはーい。恭平くん、これ聞きなさい」
玲子さんが自分のスマホを操作したと思うと
‘ゆうさんに聞きたくて’
と録音されたものが再生される。
‘恭ちゃんと連絡取っていますか?その質問の意図は?恭ちゃんが未だにあのタペストリーとかを捨てないから、ゆうさんが撤去だとか破棄って私の前でだけ言って、そのあと連絡を取り合っているかと思ったんです’
「恭平くん。これ、どう落とし前つけてくれるの?私、クリスマスイブからずいぶん恭平くんに時間使ってきたけど、その結果がこれって許容範囲を超えたんだけど?中高校生が好きだとか、フッたフラれた、誰のせい?って呼び出すレベルの低脳なやり取りにイチイチ付き合っていられないのよ」
玲子さんの言う通りだ。恭平くんの部屋の物を捨てる捨てないなんてことでイチイチ会社で待ち伏せされたのではたまらない。
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