歩む者たち

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「はい、立花くんに電話すれば?ここからは離れてお願いね、通報されたくなければ」 「ゆうさんと恭ちゃんとは何でもないんですね?」 「その‘ゆうさん’も失礼極まりないんだけど?非常識さを恥じるべきね。二人は何でもないけどさ、あなたそれを聞いてどうこう言える立場なの?」 「…そんなこと答える義務はありません」 「じゃあ答えなくていいから、二度とここに来ないで。次は迷うこともなく即、通報します。冗談じゃないからね」 ぷいっと踵を返して帰って行く女の後ろ姿を見ながら 「恭平くんもどうなってんの?」 玲子さんが呆れた声を出す。 「ゲス男の時にさ、素晴らしい対応だと思ったけど他人に厳しく自分に甘いタイプなのかしら?」 「さあ?…仕事をしている間にはいい加減さの欠片もない、出来る男ですけど」 「少し心配ね…」 「玲子さん」 「何、夕月?」 「ここに来てタペストリーのことを言われてもどうしようもないし、知らない人にずっと‘ゆうさん’って誰にも呼ばれない呼び方されて怖いとも思ったけど…吉川さんの行動が問題なのはわかるけど…立花社長とかに言うほど恭平くんも問題…?恭平くんに止められる行動なのかな?」 ああ…夕月が気にしたか…ああいう風に言われると自分のタペストリーが原因のようにも感じる部分があるのだろう。 「私たちが素性を知らなくて恭平くんがよく知っている人物の行動なら、恭平くんから正してもらうしかないでしょ?私たちは社長や警察に言うわって伝えるくらいしか出来ないもの」 「夕月は恭平くんの部屋が原因だと感じる部分があるだろうけど、それは違うぞ。玲子さんも僕も原因はそこではなく、恭平くんがああいう非常識な人間と部屋を行き来するような付き合い方をしていることが問題だと思っているだけ。恭平くんは将来のことも考えると、今から交遊関係には気をつけておかないといけないはずなんだ」 「そういうこと。だから恭平くんへの愛情を込めて立花社長に連絡するつもりよ。いい子なのに…もう部活のノリを卒業しないと危険だわ」 「そうです。宮田さんに会っただけでなく、サブコンの誰かに見られていれば…そう考えると僕もへこむくらい心配です」 「それこそ恐ろしい…玲ハウジングの仕事なんて立花電工からすれば数%なのよ。でもサブコンに切られると…終わるわよ、立花電工」 「そっか…玲子さん、湊さん、教えてくれてありがとう。私もわかっていないところがあった。よくわかりました」 「何でも私に聞きなさい。って…湊さんにその役目を取られそうね。半分ほどは私にその役目、残しておいてくださいよ、みっなとさん」
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