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「夕月」
「はい」
「湊さんのこと好き?」
コクン…
「私のこと好き?」
コクンコクンコクン…
「よしっ、まだまだ勝ってる気がする。デートなんでしょ?いってらしゃい」
「キャッ…」
「っぶなっ…」
「ごめん、ごめん。思ったより力が入ったわ」
いってらしゃいと私の背中をバシッと叩いた玲子さんの力が強くて、階段から落ちそうになったけど、湊さんが何とか支えてくれた。玲子さんがひらひらと手を振りながら2階へ上がり
「お先に失礼します、玲子さん」
私は上を向いて玲子さんのお尻に言う。
「じゃあ、僕たちも行こうか」
湊さんは私の手を取り指を絡めるとパーキングへと歩き出す。
「もう気になることはないか?」
「うん…今のところ大丈夫かな」
「夕月はさっきみたいに玲子さんや僕に何でも聞くだろ?聞けるんだ」
「うん」
「でも恭平くんは違うのかもしれないと最近感じる。仕事絡みのことは貪欲に聞いてくるけど、それ以外の話は誰とでも対等に話していると気づいたんだよ。全く嫌な感じではないし今まで気にならなかったけれど、もしかしたら知らないことやわからないこともわかった風に話しているのかもしれないな。そして同級生や女の子の前ではもうひとつ背伸びをしているのかもしれない。僕や玲子さんの前では出ない‘カッコつけ’みたいなのがあるんだろう…僕だって夕月の前で格好いい方がいい。ただ誰にでもっていうのは…どうなんだ?って話」
「誰にでも多少はある感情だから、きっと大丈夫だよね…」
「大丈夫だ。恭平くんはすぐに落ち着く」
湊さんが大丈夫だというなら、大丈夫だと私も思える。
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