接近者たち①

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接近者たち①

夕方行ったカフェが近いのだが、あんな話をしていたのを聞かれていたなら…と思うと、今夜もう一度行く勇気はなかった。 「駅前まで行こうか」 湊さんはそのカフェを通りすぎるときに、私の手をぎゅっと強く握った。その力強さに、私は手を繋ぐ気恥ずかしさを感じる間もなくただ身を任せてついて歩く。 「デザートも食べたらいいよ」 「お腹はいっぱいです。カフェオレにする」 「オーケー」 私は玲子さんや湊さんと話をする時に語尾が揃わない。二人が堅苦しいのはいらない、と言うからなのだが完全にタメ語にもならずに自然に‘です、ます’が付いてくる時も多い。 「夕月」 注文をしてくれた湊さんは私を真っ直ぐに見て 「話をしよう」 と当たり前の事を言う。それが何だか可笑しくて…でも笑ってはいけない雰囲気でグッと笑いを堪えた…はずだったけど 「うん?何が可笑しい?ご機嫌なら何よりだけど?」 堪えられていなかったらしい。
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