接近者たち①

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‘いや、でも今はいらない、それでも行かない’この飾らない、頑としてNOを譲らない、頑なな姿勢を僕に初めて向けてくれたのはいつだったか…夕月が心を開いてくれたようでとても嬉しくて、当時ラベンダーグレージュだった彼女の髪にそっと触れたことをよく覚えている。 夕月はさっき玲子さんにも‘いやだ、酔っぱらい’とポンポン、ツンツンと言葉を吐いていたが、玲子さんが‘利かん坊’だとか‘お子さま’だとか嬉しそうに言う気持ちがよくわかるんだ。 大学生の頃からの行動力や仕事への向き合い方に現れているような大人の部分と、時折こうして現れる子どもっぽい部分。その混雑が夕月の魅力のひとつだろう。この子どもっぽい部分は大人思考で本質や本心を押さえ込んだときに出る傾向にあるから、全てを受け入れて甘えさせてやればいいはず。 今は夕月の言葉で言うと‘とろりんとかわいいミルクティーべージュ’の髪の彼女にオープンクエスチョンではなく 「僕と夕月が一緒にパーティーへ行くことは悪いことなのか?」 とクローズドクエスチョンを向けてやる。 「…嫌な質問だ」 「YESかNOのみ受付中」 「…わかってる…NOでしょ?誰から見てもNOで湊さんの求めている答えもNO…」 「それでも夕月は行きたくないんだよな」 先に夕月の気持ちを僕が口にすることで、ちゃんと夕月の気持ちを理解して受け止めているというサインを出す。どうして?とは聞かずにただ受け止めてやる。
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