接近者たち①

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「チャンスは自分でも作ってきたつもりですし、玲子さんや湊さんに作ってもらったチャンスも無駄にはしてこなかった」 「一度も無駄にはしてないな。案件が重なっても休日返上で頑張っていたのをよく知ってる」 「ふふっ…そこは玲子さんの愛情を感じているところなんですよ。玲子さん、インテリアコーディネーターだけは外部の人を一切使わないんですよね…私の抱える仕事がどれだけ増えても他のコーディネーターだけは絶対に使わない」 「そうだな」 「玲子さん自身も寝る時間を削って頑張っていた時期があって、それを後悔していないから私にもそういう時期を与えてくれているんです。外でカラーセラピーの講師をして来なさいとか副業まで勧めてきたのも玲子さんの愛情で、玲子さんの後輩というか従業員の育て方なんですよね。資格を取って終わりではなく、生きた知識として常に活用できるようにすれば全ていいインテリアコーディネートに繋がる…全部を玲子さんが言ったわけではないけどそういう教えです」 「羨ましい師弟関係だ」 「…パーティーへは行きます。よろしくお願いします、湊さん」 肩の力を抜いて僕にそう言った夕月は、仕事の一環として参加を決めたというところだろう。今日のところは仕方ない。 「私…彼から話を聞いたとき…パッと浮かんだタラレバは意味のないことだと思って、男とか女とか子どもができたとか…面倒くさいとも感じて‘もう男イラナイ’という横断幕が頭の中に張られたの…バーンて」 バーンという効果音とともに額にハチマキかと思うようなゼスチャーをした夕月を 「今すぐはいらないだろうな」 一旦受け入れる。すると彼女は続けて言った。 「別にずっといらないんじゃないかな?」
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