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「…湊さん…も…だいじょぶ…」
そう言った自分の声がひどい鼻声で笑いが漏れる。それでも湊さんは私を抱きしめる両手を緩めることはなかった。
「夕月」
「…はい」
あまりにも真剣な声で…現場でも聞いたことがないような真剣な声で名前を呼ばれて少し緊張する。
「…中途半端って言わないで…違うから」
慌てて私がそう言うと彼はクスッと短く笑ったようだ。
「言わない。気持ちの一部を吐き出せたことは誉めてやる」
「…」
「夕月が人の悪口を言わないことも分かっているから今日の今日ではこれが精一杯だと思う。でも部屋に帰ればまた思い出すこともきっとあるだろうから…その時は一人で泣かないで必ず僕に電話して。僕はもう夕月の気持ちを共有したんだから続きも責任持って聞く…何時でも何回でもだ…約束できるか?」
「…」
「じゃあ朝までこうしてる?」
「電話する…」
「嘘ついたって、明日会えば分かるからな」
「…10分おきに電話してやる」
「大歓迎」
「湊さん、おかしいんじゃない?」
「至って正常」
「保護者?」
「夕月の保護者は玲子さん。夕月」
もう一度真剣な声が聞こえるが今度は緊張しなかった。
「今日は夕月にとって悪い日ではない。新しいチャンスを得たいい日だ。今夜はドレスの色を夕月のパーソナルカラーにするのか、それともクリスマスカラーにするのか…考えながら休んでくれ」
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