接近者たち①

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だが、予想通り夕月からの電話は朝まで待っても掛かって来なかった。 今日は玲ハウジングのスペースを借りることにして、今日やる予定の仕事を車に積み込むと、数時間前にタクシーで送って行った夕月の部屋へと車を走らせる。毎朝夕月が何時に家を出ているのか正確には知らないが9時までに事務所へ到着すればいいはずだ。 十分間に合う時間に夕月の部屋の前に着くと ‘下で待ってる。急がなくていい’ とメッセージだけ送るとすぐに ‘すぐ出ます’ とだけ返ってきた。眠れなかったのか… 本当にすぐに現れた夕月の手には大きめのショップバッグが2つあり、どちらも紙テープで上部が塞いであるところが笑える。ネイビーのロングコートのまま車に乗り込んできた夕月に 「早いな。ちゃんと寝た?」 と聞くと 「まあまあです。ちゃんとドレスのことを考えるようにはして…そしたらね、色は思い浮かぶけど…どんなドレスが必要なパーティーですか?全く想像できなかった…」 シートベルトを引っ張りながら夕月が僕を見る。 「イブニングドレスというのかな…夜だから。でも露出の少ない上品な感じだよ」 「私でも着られそうな感じですか?」 「もちろん。選ぶところから楽しんでくれたらいい」 あまり眠れてはいないようだが気持ちは前向きといったところか…まずまずだな。
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