接近者たち①

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いつもより早くに事務所へ着くと、閉まったままの1階はそのままに2階へ上がる。事務所は2階で、1階はショールームとまではいかないがお客様にご覧頂けるサンプルや、たくさんのリノベーションとリフォーム写真があり商談スペースとなっている。お客様だけでなく、各業者さんとの打ち合わせ等にも使われることがある。湊さんと恭平くんは必ず2階まで来るけれど。 「早いねー夕月…って…家出?違うか…ゴミ?」 製図をしていた玲子さんが私の持つ紙袋を見てそう言うので 「ゴミです。おはようございます、玲子さん。昨日はごちそうさまでした」 と答えた後ろから 「おはようございます。今日、僕一日ここ借ります」 湊さんが入ってきた。 「うん?いいけど…一緒に来たの?泊まり?」 「まさか。ゴミがかさ張るので湊さんがお迎えに来てくれただけです。湊さん、持って来たけどどうすればいいですか…このゴミ」 「適当に置いておいて。玲子さんにお願いするから」 「そうなんだ…もう私はポイでいいですか?」 「いいよ。触れたくもないもの、頑張ったよな。チョコ食べていいぞ」 湊さんはすぐに玲子さんにゴミの正体を説明している。私は立ったままパソコンの電源を入れると、簡単に掃除をしながらいつも通り今日の作業順を頭でシミュレーションする。 「私に任せなさい。男が出るとややこしいからね。有らぬことを夕月が言われるのは許せないから私に任せて。夕月、私がゲス男にここでゴミを返す…あっ、一応恭平くんにも口裏合わせ…電話しよ」 さっきまでちょっと気だるそうだったのにイキイキとスマホを持つ玲子さんの座る椅子を玲子さんごと動かしてゴミ箱を取ると、玲子さんは嬉しそうに私の頭を撫でる。椅子に乗って動いたのが嬉しいのか…そう思って元の位置に戻してあげると 「あははっ、夕月最高っ」 玲子さんのテンションがさらに上がった。
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