after story

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「名刺、減ってきた?」 「うん」 私はトン…しろさんにもたれて目を閉じた。 9月に結婚した時、いろいろな名義変更手続きをした。もちろん会社からの給与振込口座名義も変更して 「仕事は神戸夕月のままする?湊夕月でするの?」 と玲子さんに聞かれた。 「特に考えていませんでした…夕月って呼ぶ人が圧倒的多数なんで」 「神戸さんって言うのはお客様だけよね」 「はい。まだ神戸の名刺があるのでこのままいきます」 「…あんたその理由でいいの?」 「はい、いいです。次の発注のタイミングで湊に変えます」 このやりとりは結婚式の玲子さんのスピーチでも公にされたので、身内では周知の事実だ。 「お正月の百貨店は神戸のままでイベントに名前が載っているの」 「そうだったな」 目を閉じたまま、頭を撫でる彼の手を感じながらゆっくりと話す。 「あれ…何年か神戸夕月で同じ日にやっていて…今度から湊夕月で載せたらコーディネーター変わった?ってなるのかな…」 「なるかもしれないけど、仕事内容に影響がないようだったら大丈夫だな」 「うん」 「仕事はずっと神戸で通すのもありだぞ」 「うん。でも変える」 「夕月がいいなら」 「結婚までも時間がかかって…名前もすぐには変えていなくて…何もかもちょっと時間が掛かるのかな、私…」 「仕事は早い。あとは心地よいスピードってこと」 「しろさんがいてくれるから、慌てずいいスピード…ありがと」
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