接近者たち①

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「夕月」 「はい」 10時を過ぎて玲子さんに呼ばれたのでパソコンから玲子さんへ視線を向けると 「夕月はそこで湊さんと珈琲飲んでたらいいから。湊さんも昨日いなかった人ですから、その(てい)でお願いします。今日私から聞いて知ったということでの参戦は許可します。星本さんと明子さんの参戦もオーケーです」 玲子さんはタッチペンで人を指しながら‘許可’を出す。 「なんか…私だけ戦力外通告書を受け取りました」 「「「「あははっ…」」」」 私以外が声を上げて笑ったのでビクッとしておかしなキーを押してしまい、慌てて元に戻す。その時、purururu…事務所の電話でなく玲子さんのスマホが鳴った。 「はい、恭平くん」 ‘…’ 「うっそ…ウケるんだけど」 ‘…’ 「ゲス男とピンクさいとーって、そんな感じなんだ。でも今頃辞令見てるよね?」 ‘…’ 「出先からの連絡ありがと。約束は約束だから、仕事だと思っているだろうからもうすぐ来ると思うんだよね。その辞令っていつから島になってるの?…年明けかぁ…なるほど。とりあえず迎え撃つわ。帰りに寄ってくれるんでしょ?」 通話を終えた玲子さんは椅子に凭れて言った。 「ゲス男とピンクさいとーが、会社で始業直後に‘結婚します。授かり婚です’って皆に報告したらしいよ。で、夕月が彼女だって知っている人がおかしいと思って社外にいる恭平くんに連絡入れたみたいね」 「頭の中までピンクでお揃いの二人なのね。ゆづちゃんまでピンクになる前に別れて良かったわよ」 「じゃあ同僚からは‘おめでとう’と言われたすぐあとに‘さようなら’と言われるわけだな」 星本夫妻が頷き合うのを見ながら、子どもができたと聞いたのが遠い昔のことのように思えてきた。
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