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10時50分になってインターホンが鳴り、明子さんの応答で2階へ上がって来た太一をちらっと見たけど、見たくない気持ちが湧いてすぐにパソコンへ向いた。
「増山さん、遅くなり申し訳ありません」
「お忙しいところお呼び立てしてごめんなさい」
「いえ…」
「お忙しいと思うので余談は無しで…申し訳ないけど今日は仕事じゃないのよ」
「…どういうことですか?」
どうしても耳からの情報が入り集中出来そうにないのでパソコンを閉じると、私はその上にカーテン生地のサンプルを広げた。すると隣からチョコの箱がすっと差し出され、それが一粒食べてあることにクスッと笑える。
「昨日の夕方、私のいるカフェへうちの可愛い夕月とあなたが来た。植え込みパーティションの隣の席に座ったでしょ?私、隣のテーブルにいたの…ト·ナ·リ…この意味わかる?終始見届けさせていただいたわ」
何となく彼の視線を感じると思えば
「夕月には仕事しろって言ってあるから関係ないわよ。今日ここへ呼んだのも私。夕月は‘お幸せに’で終わらせたけど腸煮えくり返っているのは私。そしてまず、はいこれ…夕月にあなたの荷物をまとめろと言ったのも私」
玲子さんが彼の気を引き付けるかのように、すべて自分が指示したと彼に宣言した。私は戦力外だからね。
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