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一瞬玲子さんを見ると
「夕月、仕事でしょ?出なさい」
と言う。でも相手が…まあ、仕事相手だね…
「はい、神戸です。三宅部長、いつもお世話になっております」
三宅部長という言葉に湊さん以外が私の電話に集中したのが分かり、私はペンで‘直属上司’とメモに書いて湊さんに見せる。すぐに‘ゲスの?’と書かれたので頷きながら話を聞いた。
‘神戸さん、うちの林と斉藤がひどく迷惑を掛けたというか失礼をして本当に申し訳ない’
「あっ…ご存じでしたか…」
‘朝から部下が口々に報告に来るしメールも来るから状況を把握したんだ’
「そんなに報告があったと…なんかお騒がせしてすみません。プライベートのことなので三宅部長に謝って頂くようなことではありません」
‘それでも皆が心配してるよ‘神戸さんに仕事を断られたらどうしよう’って’
「ああ、そういうご心配ですか…」
‘林に辞令が出てね、彼は遠方に出向になるから顔を合わすこともなくなる。だからね、是非とも神戸さんと、もちろん玲ハウジングさんとも協力関係を続けさせていただきたい’
「社長に伝えておきますが、問題ありませんよ。今も私、立花電工さんからご紹介いただいたお客様へのご提案準備をしていますし、仕事はお断りしませんからご心配なくと皆さんにお伝えください」
‘本当に?うちの社長まで心配しているよ’
「立花社長まで?大事ですね…立花社長にも同じようにお伝え頂けますか?今後もよろしくお願いいたします…と」
通話を終えると、即、玲子さんに促され電話内容を詳細に伝える。
「出向?どこ?」「あなたの醜態は社長の耳にも入ったのね」
と時折玲子さんは太一の様子を窺うように完全に楽しんでいる。私が伝え終えると星本さんが彼に言った。
「ラッキーな偶然だな。今のタイミングでの出向は人目を避けられてあんたには好都合だろ?」
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