接近者たち①

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「じゃあ、あなたとお会いするのは今日が最後かしら?」 「まだ…今月はこっちにいますし…」 「有給でも取って息を潜めていないと辛いのは目に見えてるわよ?そりゃ、自分のしたことへの報いだから厳しく当たられても受ければいいんだけど…立花電工さんって風通しのいい会社なのねぇ、社員さんから部長さんや社長にバンバン連絡が入れられるんだもの」 玲子さんのあとに、また星本さんが口を開いた。 「でも上からも下からも、人としてあるまじき行為をした人間という目で見られるのは間違いないな。生まれてくる子に罪はないから、せめてあんたの気が触れることのないように…正気でいられるように願っておくよ」 怖いよ、星本さん…絶対願ってないって…正気でいられないように念じてるとしか思えない言い方だよ。 「もう顔色が悪すぎて掛ける言葉もないけれど…私、あなたに一番腹が立っているのはここからなのよ」 もう返事の声さえ出せない太一に玲子さんは何を言うのだろうか? 「あなたね、昨日一言も夕月に謝らなかったのよ。人として最低なことをしておいて謝罪がないって信じられる?こんな人間が人の親になるだなんて恐ろしいわ。悪いと思っていないから謝らなかったのよね?そこだけ確認したいわ」 「…いえ…悪かったと思っています」 「おかしいわね?だったら昨日どうして一言も謝罪を口にしなかったの?‘俺が選んだんだ’とははっきり聞こえたけれど?」
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