接近者たち①

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「玲子さん、星本さん、明子さん、湊さん、ありがとう。お仕事のお時間取ってすみませんでした」 「いいのよ。私が昨日のままじゃ気が済まなかったからね」 玲子さんがそれだけ言って仕事を再開すると、皆も同じように私に声を掛けて仕事を始める。今日は現場に行かない星本さんはバリバリ、ビリビリと音を立てて、たくさん届いているお歳暮を開け始めた。昨日私が済ませようと思ったけど出来なかった作業だ。 「星本さん、すみません。記録残しているのでお願いします」 「了解。午前中これを分けるところまで終えて、午後はカレンダー配ってくるな」 毎年この時期には、今年うちの会社が関わったお客様のお宅に一軒一軒カレンダーを配る。留守なら置いて行くのだがお会い出来たら、その後不便はないかと声を掛けるのだ。すると‘別の部屋も’とか‘実家のことで相談がある’とかいうお声が聞けることがある。だから今日の星本さんは職人さんではなく営業さんだ。 「夕月はビールはいらないんだな?」 「いらない」 星本さんは私に確認しながらビールを玲子さんと星本さんで半分に分ける。頂いた物は何でも皆で分けるんだ。 「珈琲はここ置く」 「カニ缶あるぞ。これは夕月もな」 「バームクーヘン…これはデスクに分けるか…はい、湊さんも」 包装紙や箱の処分まで結構時間の掛かる作業なので助かる。私は来週の初めに会うお客様へのご提案資料作成をしながら、自分の部屋も模様替えしたいなぁと考えていた。
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