接近者たち②

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接近者たち②

「ドレスよりも先に目が行くところがあるのは、さすが玲子さんの見つけたって言ってた人材ですね。夕月さんも玲子さんや湊さんと同じく建築士さんですか?」 ドレスショップでオーナーの夢唯さんと挨拶を交わすと、すぐに店内の照明の色や位置を確認してしまった私に、彼女は不思議そうにすることもなく尋ねてくる。 「いえ、私は事務とインテリアコーディネーターをさせていただいています」 「夕月、控えめな自己紹介だな」 湊さんがそう笑って、私がカラーコーディネーターとカラーセラピーも現役兼講師だと言うが 「大袈裟だ…」 「本当だろ?夕月メインの仕事の依頼もあるじゃないか」 「そうだけど…ドレスショップで必要な情報でもない…えっと、ドレスは何もわかりませんのでよろしくお願いいたします」 夢唯さんに改めて頭を下げた。 「カラーのプロの方なら私も楽しみですね。まずこちらへどうぞ」 彼女はドレスを見るのではなく私を店内奥の鏡の前に立たせる。 「ちょっと触れますね。失礼致します」 そう言って夢唯さんは私の肩を撫でたり、ウエストラインからヒップまでをなぞったり…聞いてみると、骨格を確かめていると言う。 「骨格によって似合う形と似合わない形がありますから。用途はクリスマスパーティーだと玲子さんには伺いましたがお間違いないですか?」 「はい、大使館のクリスマスパーティーへ僕のパートナーとして出席するためのドレスをお願いします」 「かしこまりました」
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