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「ドレスの形は、アメリカンスリーブドレスが似合う体型でいらっしゃいますね。首が長い、肩幅が広すぎない、華奢…プラス長身という条件には当てはまりませんが手足が長くていらっしゃるのでヒールを履いていただければ十分です」
夢唯さんがそう教えてくれると一人のスタッフさんがアメリカンスリーブドレスの形が私たちに分かるように1着持って来てくれる。
「ただ、大使館でのパーティーということですのでノースリーブスにはロンググローブがあった方がよろしいかと思います。半袖でもお袖があればグローブは必要ありません」
「なるほど…手袋は慣れないから飲み食いがしにくそう…」
「ふっ…夕月、飲み食いの心配な…いいね」
「湊さん、絶対馬鹿にしたでしょ?でもグラスとかツルって落としたら大変じゃない?」
「それは大変ですよね、ふふっ…では、お袖のあるタイプで夕月さんの体型を生かしていきましょう。お色のご希望はございますか?」
「黒はなしで」
「かしこまりました」
「自分ではネイビーや青紫がいいと思うんですけど…」
「はい。あとは?」
「あとはブラウンがかったようなピンクも…黒よりブラウンが似合うと思うんですけどブラウンのドレスってイメージが湧かない」
「ゴールド系のドレスがブラウン系と言えると思います。いくつかご試着していただいて肌馴染みとお顔映りを見ていきましょうね。少々お待ち下さいませ」
夢唯さんとスタッフさんがドレスの準備に離れた時
「ねぇ、湊さん」
小声で呼びながら湊さんの袖をツンツンと引く。
「ん?」
彼も私の小声に合わせて喉を鳴らすだけの返事をして身を屈めてくれた。
「試着室も開いている今、鏡のポジションが絶妙だよね?」
「くっくっ…ドレスの話かと思えば仕事だな。ああ、完璧だ。照明の色の混在も計算されているだろ?」
「私もそれを一番に思ったの」
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