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湊さんが10年ほど前に設計したという洋食店は、2階が住居であることがわからない外観に彼のこだわりが窺える。ここは特別な豚肉が美味しいと聞いたので私は‘大人のジンジャーポークステーキ’をオーダーした。
「夕月先生、内装の採点をお願いします」
キョロキョロとする私に湊さんが言うので
「若き巨匠に恐れ多くて無理」
と店内を見渡したまま答えると彼はまた愉しそうに笑う。
「老眼鏡からの若きって…ははっ…久しぶりに来たけどちょっと変わってるな」
「それってこのグリーンですか?」
「正解」
「ああ…やっぱり…半個室を演出したいんでしょうけれどちょっとね…」
「だな。でも僕は建物担当だから言わないけどね」
二人でテーブルに身を乗り出してこそこそと話をしていると、私のポークステーキと湊さんのカツがきた。
「わっ…」
特別飼育の豚ロース肉に山椒とジンジャーのソース…美味しい…
「わっ、とあとは顔で味を伝えてるんだな。気に入ったなら良かった。こっちも食べるか?粒マスタードと一緒に…ん」
「絶対に食べると読まれてる…いただきます…んっ…ふわふわ…」
こんなふわふわのカツ初めてだ…美味しい。湊さんにもポークステーキどうぞ、と思ってお皿を少し彼の方へ押すと
「うん?皿ごと交換するか?」
「違う、一口だけあげる」
慌ててお皿を戻して自分でステーキを一口大にカットした。すると
「ん」
は?
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