接近者たち②

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湊さんが10年ほど前に設計したという洋食店は、2階が住居であることがわからない外観に彼のこだわりが窺える。ここは特別な豚肉が美味しいと聞いたので私は‘大人のジンジャーポークステーキ’をオーダーした。 「夕月先生、内装の採点をお願いします」 キョロキョロとする私に湊さんが言うので 「若き巨匠に恐れ多くて無理」 と店内を見渡したまま答えると彼はまた愉しそうに笑う。 「老眼鏡からの若きって…ははっ…久しぶりに来たけどちょっと変わってるな」 「それってこのグリーンですか?」 「正解」 「ああ…やっぱり…半個室を演出したいんでしょうけれどちょっとね…」 「だな。でも僕は建物担当だから言わないけどね」 二人でテーブルに身を乗り出してこそこそと話をしていると、私のポークステーキと湊さんのカツがきた。 「わっ…」 特別飼育の豚ロース肉に山椒とジンジャーのソース…美味しい… 「わっ、とあとは顔で味を伝えてるんだな。気に入ったなら良かった。こっちも食べるか?粒マスタードと一緒に…ん」 「絶対に食べると読まれてる…いただきます…んっ…ふわふわ…」 こんなふわふわのカツ初めてだ…美味しい。湊さんにもポークステーキどうぞ、と思ってお皿を少し彼の方へ押すと 「うん?皿ごと交換するか?」 「違う、一口だけあげる」 慌ててお皿を戻して自分でステーキを一口大にカットした。すると 「ん」 は?
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