接近者たち③

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「恭平くん」 こそっと恭平くんを呼び 「ねぇ、この照明どこのか見える?」 折り畳み式の片手サイズのオペラグラスを手渡しながら身長の高い彼に聞く。最初、私がオペラグラスをバッグから出した時 「‘不審者夕月’に納得だわ、ゆう」 とケラケラ笑っていた恭平くんも、もう慣れたのか 「うん?これで見えなかったのか?」 とオペラグラスを覗いてメーカー名を探してくれる。各住宅メーカーの方も最初は 「どんなお住まいをお探しですか?」「ご案内致します」 と声を掛けてきたが 「「自由に見させて頂きます」」 と答えて、住宅ではなく家具やラグをねちっこく見る私たちを今はもう遠巻きに見ている。私が遠慮なくメジャーを出して家具のサイズを測ると 「ゆう、やりたい放題だな」 恭平くんがますます楽しそうに笑い、私がラグを捲って裏を見ると 「飽きねぇ…ゆう見てるの面白すぎ」 と私についてくる。 「楽しくて手が止まらない…恭平くん、私に時間制限を与えてください…」
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