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「昨日ドレス選べたのか?」
食事が終わりそうな頃、恭平くんがそう聞く。
「選べたっていうか…湊さんがオーダーしちゃったの」
「オーダーメイドってこと?」
「そう。やり過ぎよね…」
「湊さんだからいいんじゃね?」
「そう思う?」
「うん、思う。湊さんが誘ったパーティーだし、あの人は世界的に有名なほど稼いでるし、俺には想像できない感覚だけど、湊さんがそうしたならもらっておけばいいよ」
「前はちょっと不思議に思ってたの」
「何を?」
「大使館やパビリオンを作るような人が、楽しそうに小さな住居のリフォームしていることが不思議だったんだけど、今はそれでバランスとっているのかなって思う」
「当たってると思うぞ。快適な人の住居を作るっていう基本を忘れないために大切な作業だって前に言ってた」
「それが湊さんの建築家としてのあり方なんだね」
「だな」
「恭平くんも会社の役員とかになれるだろうけど、現場主義だよね」
一足先に食べ終わった恭平くんに言うと
「中途半端なリーダー層っていうのが会社には一番いらないと思うんだ」
彼は、現場のことをよくわかっていないリーダーが少なからず存在すること。具体的には、現場にいながら上ばかりを気にしていて、現場と本部セクションとの橋渡しもできない人がいると言う。
「俺が思う本物の現場主義は、現場の人の話をよく聞く。実際に意見を採用して試してみる。実現のために動いてやれる。有用性を認めて励まし権限を付与して任せる…現場でこういうリーダーになれたと実感出来た時に上に上がろうと決めている」
「すごく立派な大人だ…尊敬するよ、恭平くん」
自信と信念を持って話す恭平くんが、とても大きく見えてキラキラと眩しかった。
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