接近者たち③

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「買う…けど…ダメだ…いや…欲しいな…でもなぁ…」 椅子に座ったまま独り言を言う恭平くんをしばらく放っておいたが、何だかとても聞いて欲しそうなので 「…何…迷ってるの?」 と聞いてみる。 「うん…あまりにも物が無さすぎて何色にするとか、部屋全体のバランスとかがわからない…この椅子はすげぇ気に入ったけど…」 「いいよね。私はイエローにする」 「今朝のローソファーとは全然違うな」 「模様替えだもの。気分がガラッと変わるのがいいのよ」 私はオレンジがかった鮮やかなイエローのチェアとオットマンを買うことに決めたけど、恭平くんはまだ椅子の上で考えている。 「部屋の写真ある?」 「ない。そんなの普通あるか?」 「だよね…」 「今日、帰りか明日にでも寄ってくれるか?で、ゆうのアドバイスで決める。もう物がわかっているからネット注文できるし」 「いいよ。これってストックがあれば車で持ち帰りいい?」 「いい。箱無しで積もうか…ゴミになるだろ?」 「賛成。ありがとう、恭平くん」 真新しいチェアを車に積んだ時には5時。 「恭平くんの部屋ってどの辺りだったっけ?」 「ゆうの部屋からなら車で15分ほどかな…住宅街をゆっくり抜けてそれだから40分ほどで歩けるのかも」 「今から見に行こうか?」 「じゃあ、ゆうんとこで椅子を下ろして俺の部屋で‘コーディネーター夕月’になってもらってから夕飯…ってことでどう?」 「承りました」
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