接近者たち③

14/18

8032人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
「ほんとだ」 恭平くんの部屋は本当に物が少なかった。 「クロスのツートンがいいね。腰板パネルでなく、2面をポイントとして全く違うクロスを貼ってある」 「少し前にゆうもやってたな」 「うん。ウッディな感じっていうご希望があったから木目調のクロスを何面かに取り入れたね」 「あの時、現場にいたけど、皆あのクロスを天井に貼ると思っていたんだよ。そしたら職人が壁に貼り始めたから、俺たち関係ない業者が‘おいっ’‘神戸さんの図面見ろ’とか失礼なことを口々に言ったんだ」 「ふふっ、そういえば職人さんから聞いたなぁ…恭平くん、チェアの色はグリーンかな?カーキではないちょっと深いグリーンだったでしょ?グレーはもちろんここに合うけど、グリーンの方がお洒落で心理的にもいいんじゃないかな」 緑色をインテリアで取り入れると心のリラックスした状態を保つことが期待できる。 「セラピー?」 「うん」 「この部屋で気になることは?」 「言うの?言っていいの?」 「そのために先生を呼んだ。よろしく」 「うん…ちょっと白の割合が多いね」 「良くない?」 「恭平くんが気になっていないなら大丈夫かもしれないけど…」 「クロスが白でポイントと言ったクロスも白基調の大きな地模様クロスだから白が多い…入居した時からずっとだからこんなもんだと思ってたけど」 「物が少ないせいもあって隠れないから白が多いでしょ?今は夜だからマシだけどね、白は光を反射する効果があって部屋を明るくする。でも白で部屋をまとめると、太陽光が入り込んだ時に反射が強すぎて目が疲れるの。そして落ち着かなくなるという影響も考えられる」 「おお…ゆう先生、対策をお願いします」 「では、ご飯を食べながら技を伝授します」 ここで恭平くんに頭を撫でられそうだったのでヒョイと避けると、恭平くんは‘えーん’と嘘泣きした。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8032人が本棚に入れています
本棚に追加