接近者たち③

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「美味しい…里芋が止められない…」 恭平くんがよく定食を食べに来ると言うこのお店は食堂とも居酒屋とも言えるような、少し雑多な雰囲気のお店だった。ご夫婦プラスおばあちゃんが切り盛りしておられるようで、里芋とイカの煮物が絶品だ。 いろいろと注文してシェアする中から鯛ぶつと胡瓜のピリ辛和えを食べている恭平くんは 「ゆう、食べながら伝授してくれ…忘れてないかぁ?」 と笑う。私は頷きながらもササミの大葉カツを自分の皿に取った。 「あの部屋賃貸だよね?それによって出来ることが変わるけど」 サクッ…美味し…日本酒もいい。 「いや、分譲」 「…そうなの?すごいね」 「何年も前なんだけど、今人事にいる叔父がゼネコンやサブコンとの付き合いだとか言って3部屋ほど購入したんだ。で、俺はあの部屋を安くしてもらって買った」 「安くって言ってもすごいね…じゃあいじれるか…簡単なのよ、壁の白を減らせばいいんだから。恭平くんの好みで、観葉植物やローチェストを置いて下の方を覆うか、絵やポスター、タペストリーを飾って上の方を覆うか…もちろんクロスの貼り替えもひとつの方法だけどまだ綺麗だから、白が汚れた時でいいと思う」 「置くより飾るかな…チェストに入れる物がないし植物の世話に自信がないから」 「うん、じゃあ窓に向かい合う面とテレビの上の2ヵ所に飾ってね」 「ゆうの部屋のラグはどこで買うつもり?」 「ショッピングモールの中のお店かな」 「俺の部屋のも選んで。コーディネートの報酬はゆうのラグを買ってやる」 「えーじゃあ明日の午前中だけね。午後はやだ」 「いいけど、どうしてやだ?」 「木曜日のお寿司からずっと出掛けてるから」 掃除、洗濯、冷蔵庫整理…例年通り、玲子さんと星本さん夫妻へのクリスマスプレゼントも準備したい。カルチャースクールから春の講師依頼があったのを放置しているから日程を確認して返事もしないといけない。
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