揺れる者たち

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「同じ方面だから夕月の現場で下ろしてやる。10分後に出るぞ」 「はい。ありがとうございます、星本さん」 私も会社の車を出す時があるが、大工道具が必須の星本さんに優先で使ってもらう。もう1台は午後、玲子さんが使う予定だから今日私は電車のつもりだったけど助かった。今日は見本が多いのでキャリーバッグがパンパンだ。 「重っ…」 階段の上で立ち止まり、いつものバッグを肩にかけ直して気合いを入れてキャリーバッグに両手を掛けた時 「夕月、ストップ…それ重い?落ちてきたら僕の息の根が止まる」 湊さんが階段を軽快に駆け上がってきた。 「おはようございます。今日ここですか?」 「玲子さんに確認したいことがあって…すぐに別の現場へ行く。重いな」 「すみません」 「電車?」 「星本さんが車…来た。星本さんと一緒に出ます。ありがとうございました」 「ん、頑張ってきて。夜、電話する」 何だろうと思ったけど、軽バンの後ろを開けてキャリーバッグを積み込んでくれたお礼だけ言って手を振った。
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