揺れる者たち

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今日の現場は玲子さん設計で1階部分のリフォームを先週金曜日に終えたばかりのお宅だ。骨折して入院中のおばあちゃんがいらっしゃるお宅で、おばあちゃんの骨折箇所が悪くて長期入院のあと車椅子生活になることから1階を大幅にリフォームするという依頼だった。そして私には 「介護する方も、される方も、それだけを優先すると病室のようになると思うのですが、そういう雰囲気を取り払ったコーディネートをお願いしたい」 と、60代の息子さん夫婦からの依頼があったので、すでにクロス等を決める際に私もお話をしたことがあるご夫妻と最終仕上げの打ち合わせだ。まずおばあちゃんの部屋からリビングダイニングまでの動線をしっかりと確認してから打ち合わせを始める。 おばあちゃんの好きな緑と、息子さん夫婦の好きなオレンジを取り入れたいと提案する。まず緑はエアプランツをおばあちゃんの部屋の天井からいくつか吊り下げる。そしてカーテンをオレンジ系にする。 「窓を開けてカーテンが揺れてエアプランツに必要な風も送る、という風にしていただくと、おばあちゃんには外の空気も感じて頂けますし、ご家族にはカーテンの元気カラーがいい作用をすると考えました。いろいろ見本を持って来たので…」 「神戸さんのオススメは?」 「はい。こちらの…これです。レースカーテンというのはホワイトという意識が多いようですけれども、こちらは大胆な花柄模様を編みレースで表現していて、そのオレンジカラーがエスニックなデザインと相まって美しい表情を魅せてくれると思います。エアプランツとの相性もいいと思いますので、こちらのチュールレースカーテンがお勧めです」 お勧めを聞かれたらはっきりと答える。プロに求められていることだと思うから曖昧には答えない。結局、その他も私がお勧めするものに決まり 「お願いして良かったわ。これだけを自分たちで探すのは大変だもの」 と言って頂いた。 「おばあちゃんの帰って来られるクリスマスまでには全て納品、設置させていただきます」 重いキャリーバッグが気にならない足取りで帰社する。そして夜には湊さんから電話があった。
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