揺れる者たち

6/41

8030人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
「おお…こうやって並んでいると形の違いが鮮明だ…知らなかった」 蝶ネクタイに4つの形があると初めて知ると、目の前に並ぶタイが雑貨屋さんのリボンのようにも見えてきて楽しい。 「ドレスと色を合わせるの?」 「男なんて皆同じような格好だからな。そこだけ合わせようかと思う」 「蝶ネクタイ?」 「ベストも着るから蝶ネクタイで」 「ベストを着るから…シャツの見える範囲のバランスですか?」 「ご名答」 そう言いながら私の頭をポンポンとした彼は 「こんなネイビーか?暗い?」 と選び始める。ネイビーにもいろいろある中で、私たちは艶感のあるもの、形はストレートエンドの幅が細くスタイリッシュな印象のものを選んだ。 「よし、次は夕月の買い物」 「星本さんには決めてるの。地下へ行っていい?」 「もちろん。食品か?」 「そう。二人の晩酌のおともを毎年探すんだけど、今年はリサーチ済み」 私はお目当ての店で、おつまみ海苔のわさびごま味と明太子味の2缶セットを購入した。 「今、買っておいても常温保存が出来るもので美味しそうなものっていいでしょ?」 「ああ。二人ともよく飲むもんな、喜びそうだ」 「クリスマス感は求められていないし」 「わかる」 「毎年楽しく悩むのは玲子さんのプレゼント」 「楽しく悩むのはいいな」 「ふふっ…バレました?」 「夕月は玲子さん大好き、だからな」
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8030人が本棚に入れています
本棚に追加