目撃者たち

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私はコーディネーター以外の作業もする。小規模事務所ならではの、皆が何でもやるし出来るという状態だ。事務員は星本さんの奥さん、明子さん。 大工さん等の職人さんは、あちこちに登録する形で仕事を請け負う時代だ。昔は‘○○さん、家建てて’と言って一軒ずつ大工さんへ依頼があったのが、今は大手工務店がバンバンと家を建てる。そこで使ってもらえるように登録しておくのだが、同じような家をバンバン並べて建てる作業は星本さんの大工ポリシーに合わないと細々と一人で頑張っておられた。 リフォームのために訪れたある家で玲子さんが素晴らしく丁寧な造作家具を見つけて、それを作った星本さんに会いに行ったらしい。そこで玲子さんは星本さんをスカウトして、経理経験者で星本さんの確定申告等をしっかりやっておられた明子さんも一緒に連れてきたというのが、玲ハウジングだ。 実際のリノベーションやリフォーム作業は星本さん以外にも大工、左官、塗装、外壁、屋根、内装…玲ハウジングに登録しているあらゆる職人さんにお願いする。個人の職人さんばかりの中で、立花電工だけはサブコンの下請けをするような規模の会社だ。 「林、飛ばそうか…」 「どの辺りまで飛ばせるの、恭平くん?」 「今なら中国地方の小さな島がありますよ。これから開発が始まるから何年かかるかな」 「いいわね~ぽいっと飛ばしちゃってよ、ねぇ夕月?」 「別に…仕事とプライベートは分けて考えればいいんじゃないですか?私にお気遣いなく」 恭平くんと玲子さんに言ったのは私の本心だ。
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