揺れる者たち

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カウンターの椅子を引いてくれた湊さんは 「夕月、オーダーして。僕のは‘レッドエール’って言えばいいから」 と私を座らせ自分は二人分のコートをハンガーへ掛けてくれる。カウンターの中から 「こんばんは。湊の同級生の久世(くぜ)です。よろしく、ゆづきちゃん…どう書くの?」 「あっ…神戸夕月です。ゆうづきと書きます」 「秋生まれ?」 「はい」 「綺麗な名前だね」 湊さんのお友達だというマスターが言う。その通りだ…ゆうづきは秋の季語。 「で、何で湊は夕月ちゃんにオーダー任せてんの?」 「夕月が出来る子だから…なっ?」 「たぶん…?レッドエールってビールの名前なの?」 「種類」 「久世さん、オーダーします」 「はははっ…聞こえたけど、ハイどうぞ」 「レッドエールと冷え冷えのスパークリングとピザをお願いします」 「かしこまりましたけど…何のピザにする?」 「マルゲリータ」 「おっ…夕月、メニューも見ないで即決か」 「初めてピザを食べるお店ではマルゲリータって決めてるの」 「「通だな」」 「…仲良しですね…私の任務は遂行したので、あとは湊さんにお任せします」 そう言ってから私はさりげなく店内を見渡した…さりげなく出来たと私は思っている。
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