揺れる者たち

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「他のお料理なくても…マルゲリータだけでもいいかも…って思える美味しさ」 「通の舌に合ってホッとしたよ、俺。ありがとう、夕月ちゃん」 生地に余分な味が一切つけられていない、この上なくシンプルなピザ…絶品だ。 「湊さん、暗い時間の裏道を曲がったからちょっと場所がわからないので、帰りはゆっくり確認しながら百貨店の通りに戻って欲しい」 「夕月、通う気満々だな」 「これ食べたくなると思うの」 「気に入ったなら良かった。帰りに教える」 「ありがとう」 「裏道には入ったけど飲食店が並んでいて寂しい道ではないから、ぶらぶら歩かなければ大丈夫だ」 ビールのあとスパークリングを美味しそうに飲む湊さんを見ながら、ふと‘恭平くんなら、俺が一緒に来るから道を覚える必要あるか?って言うかも’とあの日以来会っていない彼のことを勝手に想像した。そして私が悪かったのに勝手な印象付けをしちゃダメだと、慌ててグラスを傾ける。 「来週ドレスが出来上がったら一度確認に行って、再来週がパーティーな」 「うん、あっという間に1年が終わる…年始は今年も事務所が始まる前に百貨店でカラーコーディネーターを引き受けてるんです…あ、来年っていうのか…」 「どこ?」 「今日の向かいの百貨店で2日間限定の仕事」 「相変わらず忙しくなるな」 「ほぼ予約が埋まっているのでふらふらになってから、事務所の仕事始めです、ふふっ」 「時間で予約取るのか?」 「そう、診断とアドバイスで1時間って予約の人と、それプラス1時間お買い物に付き合うっていう予約の人がいるの」 「今年もってことは、去年好評だったということだな」 「おかげさまで」 好評だったから百貨店から前回終了直後に依頼があった。夏は休みが不確定なのでお断りしたけれど年始は恒例にしてもいいかなと思い引き受けたんだ。
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