揺れる者たち

16/41

8029人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
「ぁ…ぁああの…」 「うん、落ち着いて夕月。慌てなくても僕はどこへも行かない」 そう言われて頷いた…が、それが小刻みな連続コクコクコクコク…となって恥ずかしさで彼のコートのボタンへと視線を落とす。寒いのにボタン止めてないんだなぁ…と思った自分が可笑しい。確かに冷たい空気を感じているのに体が熱いんだ… 「その…頬っぺが…ドキドキ…っあっ…ちがっ…間違えたっ…っと…」 「可愛い間違いだ…夕月…僕のドキドキがうつってしまったか?」 頬が熱いと言いたかったんだ… 「湊さん…ドキドキ…?」 「してるよ、夕月にドキドキしてる…ほら」 湊さんの手がやっと頬を解放したかと思うと、彼は私の頭を抱き寄せコートを避けてニットに私の耳をつける。 「…聞こえる?」 聞こえるけど…またもや左の頬が彼に触れ熱い。 「一緒に笑って…一緒にドキドキもして…夕月」 「…してる…」 「僕に確かめさせてくれる?」 私に覆い被さるようにして右の耳に囁く彼のバリトンが脳を溶かしてしまいそうだ。耳と脳は繋がっているらしい…って違う…どうやって確かめるの?
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8029人が本棚に入れています
本棚に追加