揺れる者たち

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「…大丈夫…です…ちゃんとドキドキ…」 何とか言葉にしながら彼のニットをキュッと握りしめる。すると湊さんは何故か自分のコートで私を包んだ。寒くて引っ付いたと思われた? 熱いと感じていた体を包まれて、体は冷気に晒されていたのだと気づくほどコートに包まれた箇所は心地よく暖かい。 「大丈夫…ちゃんと分かったから…いっぱいドキドキしてるから…分かったから…」 「うん」 抱き寄せた頭をそのまま撫でながら、彼はその私の頭にゆっくりと頬擦りをする。 「湊さん」 「うん?」 「ちゃんと‘瞬間’を意識的に作ってみる」 「うん」 「でも…ごめんなさい…私が今言えるのは…それだけ…」 「うん、十分。それに僕は夕月がすぐにどうこう返事出来るとは思っていない。それくらいには夕月を理解している…」 「…嬉しい…かも…です」 私がそう言うと彼はぎゅうぎゅうと強く私を抱きしめながら…チュッ…チュッ…二度、頭に唇を落とした。 「今夜はここまでだね…送るよ」 湊さんは私の手を取り大通りでタクシーを捕まえると、手を繋いだまま一緒に乗り込む。そしてその手は、私の部屋へ到着するまで一度も離れることはなかった。
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