揺れる者たち

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湊さんは玲子さんに挨拶したけど、玲子さんは4件のアポのまとめに殺気だっていた。 「玲子さーん、はい…あんドーナツ」 「うん…湊さん、打ち合わせ、よろしく。夕月、フルーツサンドも欲しい」 湊さんの声は聞こえていたらしい玲子さんは、あんドーナツを齧りながらフルーツサンドをご所望だ。 「はい、置きますよ。湊さん、お腹へってませんか?まだパンがあるんですけど」 「ありがとう、僕はいいよ。じゃあ、内線鳴らすね、夕月」 湊さんがドアを半分開けた時 「ちょっと待ったぁ…湊さん」 玲子さんが湊さんを呼び止める。 「はい」 「夕月…の音が違って聞こえたのは気のせい?」 「気のせいでしょ。じゃあ」 彼は立ち去り、玲子さんの視線は私へと向いた。 「何かあった?」 「いえ…ご報告するようなことは何も」 「それであの‘夕月’はどうなの?」 「さあ…昨日、パーティー用のタイとチーフを買いに行って食事しただけです」 玲子さんのプレゼントを買ったとは言えない。 「それだけであの音色は反則ですねぇ…腰にくるバリトン…」 「あら、明子さんは腰に?私は子宮に…」 何の話だ…私は何も聞こえないふりでメール作成をした。
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