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はじめからこうやってちゃんと話をすれば良かったんだ。リカと、浅野さんとも、そして、彼と。
―何でも言えばいい、我慢なんてする必要ないから―
彼も、そう言ってくれていたのに。
私はいつも、逃げてばかりだった。
あの頃、何度も、何回も言いかけて止めた言葉がある。
駄目だとわかっていながら、止められなくて、どんなに時間が経っても忘れられなくて。
結局のところ、私が今でも彼に伝えたいのは、それだけだ。
今更受け入れてもらえるわけないにしても、宙に浮いたままの言葉をもういい加減解放してあげたい。
その後の事は、それからまた、考えればいい。
心を決めて、バッグからスマホを取り出そうとした時だった。バッグの中でスマホが鳴っている。……メール、じゃない、着信だ。誰だろう、人がせっかく決意した時に、タイミング悪いな。スマホを取り出して確認する。
表示された名前を見て全身に緊張が走る。
二年間消す事が出来なくて、今まさに私が連絡をしようと思っていた、彼からだった。
……嘘でしょ?……本当に?
あれこれ時間をかけて考えていた事が全て頭から消し飛んでしまった。
けどここで迷っていたら電話は切れてしまって次に繋がる可能性が必ずしもあるとは限らない。
もうこれ以上タイミングは逃したくない。
意を決して電話に出る。
「………はい」
少しの間の後、電話越しの懐かしい彼の声が私の名前を呼ぶ……。
『……英理奈さん、今、どこにいるの?』
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