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その日は出先から必要な物を取りに帰っただけであまり時間に余裕が無かったオレもイライラしていてつい口論になった。さすがにお互い手は出なかったが、売り言葉に買い言葉、まぁまぁの怒鳴り合いをした。以来母親とは必要最低限の会話しかしていない。
父親は息子のオレから見ても根っからのお人好しで幼少期から怒られた記憶はほとんどない。二つ上の姉と共にオレは父親には溺愛されて育ってきた。母親はそれがまた気に入らない。自分ばかりいつも悪者にされるからだ。それがわかっているから母親の手前はっきりとは言わないが、父親はオレのやりたい事を密かに応援してくれていた。
姉は就職してさっさと実家を出て今は彼氏と同棲中らしい。もう二年近くまともに会っていないし普段は連絡もお互いほぼしない。
コンビニに行くため一度自室に戻り財布とスマホを手に取ると新着のメッセージが届いているのに気が付いた。画面に映る通知を見た瞬間、心臓がドクンと大きな音をたて、スマホを持つ手が微かに震える。
英理奈さんからだった。
【今日バイト?】
たったそれだけの内容でも勝手に顔がにやける。自分を落ち着かせるためにも三分程間をおいて、
【今日は休みです、ヒマしてます】
と返信した。既読になった瞬間画面を閉じて待つ。
【飲みに行かない?】
信じられない文字が目に飛び込んできた。
【いいですね、ぜひ】
と努めて冷静に返信したが、オレは一人で雄叫びを上げていた。
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