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 英理奈さんとの待ち合わせ場所へ向かう道中、オレは急に不安になってきた。もしかしてオレの知らない間にうちのバンドメンバーが彼女の連絡先を聞いていて待ち合わせ場所に行ったら全員いるドッキリとか、普通に彼女の友達も一緒にとか、最悪彼氏が一緒なのではと嫌な想像をあれこれ巡らせていたが、待ち合わせ場所では英理奈さんが一人でオレが来るのを待ってくれていた。 「すみません、遅くなって」  オレに気付くと手に持っていたスマホをバッグに仕舞い、イヤホンを外しながら、 「大丈夫、私もついさっき着いたとこ」  そう言ってとびっきりキレイな笑顔を見せてくれた。  これからのひと時、この笑顔をオレは一人占め出来るのか…。  年上で社会人の女性と食事に行くならやっぱり小洒落たイタリアンとかフレンチが喜ぶのかなと思ったけど、貧乏学生バンドマンのオレにそんな引き出しがあるはずもなく、どうしたものかと行き先を決めかねていたら英理奈さんの方から「居酒屋が良い」と提案してくれた。  ……気を使われたのかな、だけど居酒屋ならこの辺りの店は知り尽くしている。それでも万が一知り合いと鉢合わせしてしまうと面倒なのでライブの打ち上げや打ち合わせでよく行く居酒屋は避けた。  以前打ち上げに一緒に行った時にも思ったが、彼女は結構飲める人だ。居酒屋が良いと言ったのもオレに気を使ったというより、単純に安くたくさん飲めるから、という理由な気がしてきた。  はじめは笑い方も話し方も大人しめだったが、アルコールが進むにつれ声も大きくなり、よく笑ってくれた。敬語はやめてと早々に言われたので気を使わずに喋れて話も盛り上がった。 「へぇ、バンドのメンバーみんな同じ大学なんだ。みんな同い年?」
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