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 音楽との出逢い、ギターとの出逢い、バンドメンバーとの出逢い、どれも大切で、ちょっとクサイ言い方をするならばどれも運命だと思っている。そして今、目の前にいる彼女との出逢いも、そうだと思いたい。そのためには、あまり積極的に聞きたい話ではなかったが、確認しておかなければいけない事があった。 「そういえば英理奈さん、今日って、何か予定があったんじゃ……」 「あー、うん…、彼氏のとこ行く予定だったんだけど、ドタキャンされちゃって…。なんかごめんね、急に誘って付き合わせちゃって」  やっぱそうか。 「いや、オレは全然大丈夫、暇してたし」  ドタキャンされて英理奈さんは可哀想だけど、オレとしてはラッキーだ。 「……あんまり上手く行ってないの?その、彼氏と…」  これはもうただのオレの願望でしか無い。 「んー、そう言う訳じゃないんだけど、仕事忙しい人で、電車で2時間位かかるとこに住んでるから、なかなか会えなくてね」  そう言って寂しそうに笑う。くそぅ、こんな顔させるなよ。顔も名前も知らない彼氏が憎たらしくて仕方がない。遠距離で簡単に会えないのによくドタキャンなんて出来るな。 「そうなんだ、寂しいね。オレで良かったらいつでも付き合うし…」   本音と建前の入り混じった台詞が自分で言ってて白々しい。けど彼女はちょっと嬉しそうだった。 「ありがとう。…彼、あんまり音楽に興味ない人だから、今日みたいな話出来るの久しぶりで私も楽しい」  …その言葉を貰えただけでも今日のところは大満足だ。  彼氏に会えない寂しさに付け込もうと思えば付け込めたのかもしれない。もしかしたら英理奈さんもそれを待っていたかもしれない。けど今はゆっくりでも確実に彼女の中でオレの存在を確立して行かないと。聞けばドタキャンされたのは今回が初めてではないらしい。そんな寂しい思いばかりさせている遠くの男より、近くにいる気の合うオレの方が絶対に有利だ。  焦る必要は無い。  そう思って、その日はそれで別れた。
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