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 トリを飾ったバンドがアンコールを終え、ステージからはけて行った。  今日の対バンイベントの主催で、オレたちのバンドが出演出来るよう直接声を掛けてくれてた大切な相手なので労いと改めてお礼を言うためにオレは彼らを追いかけた。  最後にステージを降りて行ったボーカルの松本さんにすぐ追いつく。 「松本さん、お疲れ様です…」  …しまった、声をかけてから気が付いた。狭いライブハウスの通路の途中でオレの呼びかけに振り向いた大柄な松本さんの影にすっぽりと隠れていて気付くのが遅れた、一人の女性と松本さんが親しげに話していたところだった。オレとその女性の目が合う。 「あ、ごめんなさい、お話し中に…」 「あぁ、いいよ、お疲れさん」  松本さんはバンドでは渋いブルースロックをやっているのにMCではまぁまぁ汚い言葉で客席を煽っているような人だが、普段はとても穏やかで屈託なく笑う良い人だ。  それにしてもキレイな女性を連れているな。けど、二人で居ると言うことは…、 「彼女さん、ですか?」 「いや違う。常連さん」  常連さん、ファンとも、友達とも、違うのか?オレに松本さんの彼女と思われたのが嫌だったのかその女性は少し不満そうな顔をしている。 「そうなんですか、なんかいい雰囲気だったから」 「逆だよ、打ち上げ誘ったら丁重にお断りされたところ」  そうか、さっき見たのはにっこり笑って断られていた場面か。そしてこのキレイな女性が今日の打ち上げに参加しないのは少し残念だな。なんてことを考えていたので、その間型の良い切れ長の瞳で彼女がじっとオレを見ていたことにようやく気が付いた。 「…ヘルター・スケルター、演ってたよね」
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