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 英理奈さんの連絡先を無事ゲットしたものの、散々悩んで時間をかけたにも関わらず、結局その日ライブに来てくれたお礼と次のライブの告知というありきたりなメールしか送れなかった。英理奈さんからの返信もそれはそれは事務的な内容だった。  その後も彼氏のいる年上の女性に気軽にメールを送るのを躊躇い、一日に何度もメール画面を開いてみては閉じて、やがてあれこれ考えるのもめんどくさくなって、結局最初のメール以来何のやりとりもしていない。  英理奈さんの方からメールや電話が来ることも無かった。 「あの後どうだった?えりなさん、だっけ?」  ライブから数日後、スタジオ練習終わりに行った居酒屋で席に着くなり斉藤がそう聞いてきた。スタジオ練習後行きつけの居酒屋で打ち合わせという名の飲み会がしばらく恒例になっている。 「どうって、ちょっと話しながら駅まで送って、それだけだけど。あの後すぐオレちゃんと打ち上げ会場戻ってきたろ」 「その後だよ、まさかおまえ、連絡先聞かなかったのか?」  湊が呆れ顔で言う。 「いや、それは、聞いたけど」  「なんてメール送った?」  「普通にこの前のライブに来てくれたお礼と、次のライブの告知?」  何で馬鹿正直に洗いざらい喋ってしまってるんだろうオレ…。 「ほんとに普通だな。会う約束とかしてねーの?あれから何日経ってんだよ」  そう言うと最初の一杯を飲み干した長田が「すみませーん」とすかさず次のビールを注文をする。小原は見たいアニメがあるからと今日は欠席だ。 「彼氏持ちなんだから、そんな気軽に誘えないって。……つーか、オレ別にそういうつもりじゃないし」
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