6(完)

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6(完)

「報酬もらえんならどうでもええねん」 帰りの新幹線の車内。 車内販売でゲットした駅弁の釜めしを頬張りながら、対面席の関西弁守銭奴が宣言した。 「身も蓋もねえ」 仕事は無事済んだ。 茶倉は「お相撲さんごっこ中は絶対出てくるな」と厳命し、女の子がそれに応じて一件落着。 ちなみに「なんでお相撲さんごっこにまざっちゃだめなの?」と聞かれ、「相撲は一対一で取り組む神聖な国技。外野が土俵に上がるんは国辱や」と諭していた。 車窓には牧歌的な田園風景が流れていた。 茶倉の報告に大喜びしていた女将さんと、その裾を掴んで控えめに手を振る女の子を思い出し、ポツリと呟く。 「本当にあれでよかったのかよ」 「また悪い癖がではった」 「だって実の親子なのに知らねえまんま」 「俺は仕事をした。あとは知らん」 「まだわかんねーことがある。あの子がただの水子の霊なら、なんで福来館の客は福にあやかれたんだ?」 「思い込み。プラシーボ効果。人間は原因と結果を結び付けたがる生きもんさかいに、単なる偶然を必然にすり替えたがんねん」 真実もわかってしまえばあっけないものだ。 結局福来館を出てった本物の行方は不明なまま、あの子は自ら望んで座敷童子の代わりをし続ける。 「綺麗な服着せてもろて、いっぱいおもちゃもろて、案外今のが幸せかもしれへん」 茶倉の独り言めいた取り成しには答えず、箸で摘まんだ釜めしを噛み締める。 「……時がくれば自然と気付くかもな」 ふと視線を上げれば、向かいの茶倉が頬杖を付いていた。何にと聞かなくてもわかった。 「女将さんが死んだ子の年を数えるのをやめたら、あの子も消えちまうのかな」 「成仏て言え」 「せやな」 「まねすな」 脚を蹴られたので蹴り返す。そういえば名前を聞き忘れたが、別にいいか。女将さんだけが知ってりゃいい事だ。 車窓を眺めるのに飽きたのか、茶倉が割り箸を割って釜めしをかっこみ始める。 「干しあんずよこせ」 「代わりに鶏肉」 「バランとトレードな」 「ブチ殺すぞ」 俺は優しいので、アホが押し付けてこようとするバランを弾いて干しあんずをくれてやる。 茶倉が珍しく「おおきに」と述べ、余計な一言を付け足す。 「寸止めで残念やったな」 「別に」 「帰ったら続きするか」 「コスプレHにドハマり?」 「ドヤるのは浴衣の着付け覚えてからにせえボケカス」 「んだよノリノリだったくせに」 自分を棚に上げた暴言にイラッときたものの、新幹線の車内で口論おっぱじめるほど大人げなくない俺は、釜めしを頬張って言った。 「今度は一緒に温泉入ろうぜ」 返事が来るまで三秒ほどかかった。 「考えといたる」
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