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翌日。
店主は珍しくテレビを見ていた。
『✕✕市15歳少女殺害事件横山容疑者を逮捕』
そのテロップを見た店主はほくそ笑み、キャスターの言葉を待った。
『✕月✕日に✕✕市で起きた少女殺害事件の容疑者が、きのう午後四時頃身柄を確保されました。横山容疑者は✕✕市の✕✕✕工場にて、被害者の元父親である石井菊也さんの遺体をトロッコに乗せているところを、捜査に訪れた警察に発見され、死体遺棄容疑で現行犯逮捕されました。その後、同工場にあった鉄パイプから、横山容疑者の指紋、そして石井菊也さん、石井遥香さんの血痕のついたナイフが検出されました。容疑者は容疑を全面的に認めた上で、"全て悪魔のせいだ。俺が人殺しになったのは致し方のないことだった。"などと供述しています。』
「……ふふ、きっと今頃、"嘘を吐かない悪魔の言う通りにしたのに、どうして捕まったんだ"などと思っているのでしょうね。」
次のニュースが始まったのを確認した店主は、すぐにテレビを消した。
「"悪魔は嘘を吐けない"という言葉自体嘘だとは考えなかったのか。……悪魔がヒトに劣る訳がないのに、楽天的で何より。」
店主は先日のことを回想していた。
膝から崩れ落ち、俯いていたあの時。
店主は記憶を見ていた。本来、記憶を見る条件はただ一つ。寿命を持つ生物であることだ。
店主は午後三時半に警察が廃工場を捜査すること、それが横山には伝わっていないことを知った。
店主のアドバイスは全て、横山が逮捕されるように仕向けられたものだったのだ。
──リリリン。
ドアベルの音に気付いた店主は、すぐにドアの方を見た。
「いらっしゃい。……お久しぶりだね。」
どんな記憶をレンタルしたいのかな。
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